Building No.248 2021年 春号-非会員
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都心から、住む、学ぶ、遊ぶ、ホテルなど業務だけで無い機能を再集積し、空洞化した都心に付加価値を与える時代。「リ・アーバナイゼーション」「再都市化」の時代になっている。たとえば森ビルによる六本木ヒルズの計画は、ル・コルビジェ「輝ける都市」(都心部に高層ビルと同時に空地、街路を整備し都市の過密問題を解決しようという思想)とハワード「田園都市」(自然と共生し、自立した職住近接型の緑豊かな都市)の複合立体化として完成された。私は森ビルのアドバイザーをさせて頂くなかで日本人が生み出した究極の「雑」居ビル(ハイブリッドビル)であり、雑多な要素を取り込むことで新しいモノを生み出す試みと評価した。新しい都心は機能複合、用途複合の人間中心主義の開発になる。生活のスタイルが魅力的であるところに企業も投資をする。郊外も同時に変わらなければならない。新しい郊外開発は、東京だと二子玉川の事例などが注目されるが、まだ今後の課題である。郊外の開発の変遷をまとめた「大大阪時代の洋風住宅デザイン─昭和レトロ間取り探訪」を青幻舎から昨年上梓した。私鉄各社による郊外開発が始まって1世紀になる。私鉄各社は郊外の地主と共にこの時期に住宅・不動産開発を行った。郊外に住んで都心に通勤する職住分離を始める前は、職住近接が当たり前で、富裕層だけが郊外に別荘地を持っていた。当初の鉄道事業者は電気事業者でもあったので、沿線への電気供給でも収益を上げていた。都心が高密でかつ煤煙で空気が悪いのでサラリーマンが月賦によって空気のきれいな郊外に建売住宅を購入し、都心に通うようになった。大正から昭和初期は和洋折衷の住文化が浸透。和風でもイス・テーブルで食事をするなど、新しい生活文化が郊外にあるんだと言うことで都会の人を郊外に惹きつけた。阪急石橋の温室村、伊丹養鶏村、農園付き、家庭菜園を含んだ田園生活を楽しむというような住宅分譲もあった。藤井寺など野球場や学校、遊園地経営など都心ターミナル開発と郊外の開発が対になって沿線を考えていた。私は現在京都の郊外の戸建てに居住している。当初、遠いところで不便だなと思っていたが、コロナ禍であらためて郊外生活の良さを実感している。過密と過疎の問題は大阪の戦後復興都市計画にもあった。都心の過密を郊外に分散する施策が計画されていた。船場に大規模公園を設置するといった巨大公園計画や中央道路に100m道路整備が計画されていた。区画整理しきれなかったので実現しなかった。道路を軸として計画されていた。都心部の道を拡幅するのと同時に機能の郊外への移転が計画されていた。この計画の一環として'70年万博時に環状道路(近畿道、外環状)が整備された。千里ニュータウンは戦前の田園都市の戦後版といえる。東大阪には文具等の卸機能を移転。都心部の問題解決の為、郊外に機能を移転した。都心部の過度の集中を郊外に分担させるのが戦後の都市計画の基本であった。国土交通省の「大都市戦略」の中で、大阪は大都市なのか地方なのかポジションが不明。地方再生の議論では大都市圏の未来像を意識していない。リニア開通によって形成されるスーパーメガリージョン構想では三大都市圏の一体化による巨大都市圏の創造がうたわれている。関西圏は「医療・ライフサイエンス分野の強化等により、アジアと共に進化する国際ハブ都市圏として発展」と位置付けられている。「都市再生の好循環の加速」(民間都市再生のストックが点から面に広がり、面的なマネジメント活動等によって、さらにストックの価値が高められ都市全体に波及する)として各都市圏で代表的なプロジェクトが取り上げられているが、首都圏では巨大プロジェクトが数多くあるのに対し、関西圏ではほぼ完成したプロジェクトばかりで、個々の開発が面的に広がっていない。我々の未来、将来に向けての構想が必要である。大阪都市圏はアジアのゲートウェイ、スーパーメガリージョンの西の拠点として位置づけられる。同時に、ここは環瀬戸内圏の東の拠点なので西日本エリアとの連携が重要。今、お話しできる範囲で計画されているプロジェクトをご紹介する。大阪城東部地区の56 haについて、2025年の公立大学大阪新キャンパス開発をトリガーにしてUR団地、車両基地の再開発が進展することが期待される。加えて、OBPの再々開発や京橋駅周辺の再開発等もいずれ動き出すことになるだろう。森之宮周辺では大阪城公園の緑地と一体となった開発が見込める。◦北陸新幹線開通(2040年以降未定)、リニア中央新幹線の乗り入れの可能性。◦巨大な地下鉄工事駅改装が始まる。◦駅前広場の再整備、再開発。◦新大阪駅周辺を中心に、阪急十三駅、淡路駅周辺など広域のエリアが検討対象地域になっている。◦十三にある船着き場を活かした舟運の活用。◦阪神高速道路淀川左岸線が延伸し2025年に万博会場までのシャトル便が開通。2027年には一般利用が開始し、新大阪での長距離高速バスのターミナル化がすすむ。◦阪急電鉄の十三〜新大阪間開通。将来的には伊丹空港までの延伸の可能性もある。広域交通ターミナル化が進み一大ハブ拠点になる。また、うめきたと新大阪を一体としたエリアとしての機能分担が議論されている。御堂筋を魅力あるメインストリートにしていく。御堂筋は高さ制限のため立替が進まなかった。昭和40年頃に建築されたビル街が夜はシャッター街となっていた。買物、2 都心と郊外国土形成計画と大都市戦略ポスト2025年のプロジェクト群① 「大阪城東部地区周辺部開発」② 新大阪駅周辺地域③ 御堂筋の空間再編                       2Building No.2484 3 

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