御堂筋の歴史を彩る御堂ビルディング、登録有形文化財に登録される重厚な佇まい
大阪市内のビルを巡り、その歴史と現在までの移り変わりを探る「ぶらり大阪ビル散歩」。
連載14回目となる今回は、御堂筋と本町通が交差する、本町三丁目の交差点に立つビル「御堂ビルディング」を紹介します!ブラウンのタイルのレトロな雰囲気が重厚感たっぷりで、このあたりを歩く誰の心にも印象が残っているはずのこちらのビルの中には、外観のイメージどおりの歴史と、外観からは想像できない室内空間が広がっていました。


御堂ビルディングとは?
御堂ビルディングは、昭和40年(1965)に株式会社竹中工務店の本社として同社によって建設された歴史あるビルです。
大阪の中心を走る御堂筋と向き合っても負けることのない、建築の永続感が表現された外観は、竣工から今でも変わることがなく、御堂筋の都市景観を長く牽引。
「御堂筋といえばこのビル」と感じる人も少なくないでしょう!

登録有形文化財に登録され
今後も維持保存に努める
御堂ビルディングの建物としての価値は、令和5年(2023)に登録有形文化財(建造物)に登録されたことでも分かります。登録が決まった際に文化庁からは、設備などを中心に配したセンターコアの平面を採用したことや、単窓(たんそう)の繰り返しとタイル貼りによって格調高く仕上げられた外観などが高く評価されたと発表されています。
本当にすごいことですね!
それでは中に入ってみましょう!

1m下げられたエントランスは
「31m」時代の建築を意味
御堂筋に面した入り口から中に入るとそこには落ち着いた雰囲気のエントランスホールが広がっています。1階の床が道路から約1m下げて設計されており、竣工当時の最高高さ「31m」の法的制約を満たしつつ9層のオフィス空間を確保するための工夫がなされています。
ホールの両側には御堂ビルディングの歴史が記されたパネルが飾られており、そこを見れば誰もがこのビルの歴史を知ることができます。興味深い内容なので、待ち合わせの際などに読めば止まらなくなりそうです。

1階エレベーターホールの壁は
大工道具を象ったデザインに
エントランスホールを抜けエレベータ前に進むと、周囲の壁が不規則で独特に凹凸していることに気づきます。近づいてよくよく見ると、不規則な壁の中に鉋(かんな)や鑿(のみ)といった様々な建築用の道具を押しつけて象ったあとを見つけることができます。
荒々しい凹凸とまるで自然にできたかのようなざらざらした質感は、ここ以外のどこでも見られない唯一無二の存在感です。

廊下でフロアがつながった内装で
コミュニケーションも円滑に
2014年にプロジェクトがスタートしたリニューアル「御堂ビルディングイノベーションスペース整備プロジェクト」によって、現在のビルの中は竣工当初とは大きく変化しています。
まず、各フロアを内部階段「閃き階段」でつなぐことで上下フロアの円滑なコミニュケーションを実現。
さらに紙資料の廃棄と電子化によって書類を60%削減し、個人執務机の30%ダウンサイジングと合わせて、同じ広さでもより広々と使えるようになったそうです。

共有スペースも多数
見た目も使い勝手も良!
個人執務エリアの脇の共創空間には、大型モニターにてWEB会議が行えるファミレスシートや、プロジェクト毎の協業ができるプロジェクトテーブル、集中して一人で業務に取り組むことができる集中ブースなどが配置されており、歴史ある重厚な外観からは想像できない、おしゃれでカラフルな空間になっています。
こんなオフィスなら、出社するのが楽しみになりそうです・・・。

屋上には緑の庭園
働く人々の憩いの場に
最後には屋上にも上らせていただきました!
御堂ビルディングの屋上には、ここがビルの屋上だとは思えない緑に覆われた空中庭園があり、ここで働く人たちの憩いの場になっているとか。
周りを見渡すと、他にも多くの高い建物が並んでいるため素晴らしい景色!とは言えないまでも、竣工された昭和40年の御堂筋の景色を想像したり、それから60年近くこの場所に立ち、御堂筋の変遷を見守ってきた偉大なるビルの歴史の重みを感じることができます。
歴史のあるビルを中心に紹介しているこの「ビル散歩」。
長い歴史と引き換えに最新の大型オフィスビルのような規御堂筋を通れば誰もが目にするこの御堂ビルディングも、中に入る機会はなかなかなく、その趣深いタイルの壁の向こうがどんな空間になっているのかは想像することができませんでした。
ですが、今回の取材を通してこのビルの想像以上の変化を知ることができ、驚きを隠すことができません。
歴史あるビルの奥は深い!と思わずにはいられない一日でした〜。
おまけ

ビルの地下には広い社員食堂があり、これは竣工当初からあるものだとか。
朝食からランチ、そして午後のティータイムや休憩など、社員のみなさんがまるで街中のカフェやレストランのように自然に利用されている姿が印象的なこちらの食堂。もちろん内装はリニューアル済みですが、なんと、使用済みの食器を下げるためのベルトコンベアだけは竣工当初のものを利用しているというからびっくり!
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※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。