御堂筋と高麗橋通りの角に立つ興銀ビル、他にはない贅沢な空間と重厚感に
大阪中に点在する素晴らしいビルを巡る「ぶらり大阪ビル散歩」。
第8回目となる今回は、大阪のメインストリート・御堂筋に立つ興銀ビルを訪問。大阪で一番のビジネス街・淀屋橋にあり、駅からもアクセス抜群という立地を誇るこちらのビルですが、訪れてみると、竣工から現在まで紡がれ続ける長い歴史がありました。
興銀ビルとは?
大正9年(1920年)竣工の日本興業銀行大阪支店があった場所に、昭和36年(1961年)に興銀ビルが竣工。当初は1階から3階まで日本興業銀行大阪支店が入居しており、リニューアルを経た今でも所々にその当時の名残の豪華さや頑丈さが見られます。そんなこちらのビルの一番の特長は、ビルオーナーが入居していることによる、サービスが行き届いた心地いいビル空間。「空いてもすぐ埋まる」という人気ぶりで、なんと竣工からずっと入居している企業もあるのだとか・・・。
元銀行の名残で、
1階に駐車場スペースあり
ビルの歴史を知るために見せていただいた資料の中で、最も目をひいたのが、リニューアル前の1階スペースのイラスト。ビル南側からのエントランスには広い駐車場があり、ビルの中にはエスカレーターも。「1階を駐車場にしたことによる損失をこえる、大きな利益があった」と資料には書かれており、確かに、こんなに贅沢な駐車場があるビルは他ではあまり見られず、独特の重厚さを醸し出しているように感じられます。
平成18年(2006年)に大規模リニューアル
1階は「広々とした」スペース
平成18年(2006年)に行われた大規模リニューアルでは、銀行店舗跡をオフィス仕様に全面的に改修。空調や照明設備も最新機器に入れ替え、ビルとしての新しい歴史を歩みはじめました。「エレベーターも全面改修し、籠も入れ替えた」という力の入れよう。エスカレーターがなくなり、広々としたロビーや東側エントランス付近にはサロンスペースなど非常に贅沢なスペースがあります。
それでは中を探索してみましょう!
余裕のある新エントランス
駐車場はそのままに
まずは1階部分から。温かみあふれる照明のエレベーターホールには、エレベーターがずらりと5基もあり、常に1台は1階にスタンバイしているため待つことなく目的のオフィスに向かえます。そしてその反対側を見ると、こちらのビルの特別さを物語る駐車場が。今は落ち着いた雰囲気の駐車場スペースに、銀行が入居していた頃の賑わいを思い浮かべつつ、ビルの歴史を想像しました。
駐車場では、警備員さんが誘導するので安心。
フロアは近代的なビルそのもの
エレベーターでオフィスフロアに上がると、そこはもちろん近代的なビルそのもの。ビルオーナーによる一貫したサービスで常に清潔に保たれており、静かですっきりとした印象。トイレやパウダールームも美しくリニューアルされており、淀屋橋の中心のこんな素敵なビルで毎日を過ごせたら・・・と妄想も膨らみます。
サロンや私設ポストもあり
ビル利用者の利便性は高い
各階のフロアには、現代のビルではあまり見かけない「私設郵便差出箱」があります。ビル竣工時に設置されたものがそのまま使われ続けているもので、電子メール中心の今の時代にはそこまで重要にされるものではないそうですが、「あるとやはり便利なので、無くして欲しくない、というテナント様の声に応えて」残しているとか。同じく1階にあるカフェのように広々としていて快適なサロンといい、利便性や快適性にはこだわっています。
屋上からは御堂筋の「高さ規制」の歴史が
そして屋上まで上がると、通りを歩いているだけでは感じられることのない御堂筋の開放的な空が。ビル街なのに思いのほか遠くまで見わたすことができる秘密は、御堂筋沿いのビルの高さが規制によって抑えられているから。確かに、ここに立つときれいに一直線にずらりと同じ(ような)高さのビルが並んでいて壮観です。
「ほとんどのビルが同じ高さに見えますが、微妙に高さが違っています。昭和12年(1937年)の御堂筋開通時には、街並みを揃えるための百尺(約31m)制限がありました。これが平成7年(1995年)には50mに緩和されました。さらに現在では御堂筋に面した軒高は50mですが都市再生特別区域の上層部は、容積率に応じて最高高さ140mのビルも建設可能となっています。ですから、御堂筋はビルの高さを見ると建築された年代が判ります。」
下から見上げるだけでは、分かり難いことが多くあります。
地下に隠れる歴史の数々
屋上から一気に地下まで降りると、地下の空間には60年以上前に建てられた歴史を垣間見ることができました。広い空間にあったのは、まだセントラル空調だった時代に大活躍していた超巨大なコンプレッサーや、超巨大なボイラー、そしてメルセデスベンツ製の発電機。「大きすぎて出せない。解体して運び出すにはコストがかかりすぎるから、地下に置いたままにしている」というこれらの機械たち。今は最新の機器を少人数で管理していますが、当時はこの空間で何人もの人が忙しく機械を動かしていたそうです。
御堂筋の一角に何気なく佇む興銀ビルですが、中に入って探索すると、長い歴史とビルオーナーの思いが詰まった温かみあふれるビルだということが分かりました。そして屋上からの現在の御堂筋の眺めと、地下に埋もれる歴史の対比に感嘆。ビルに歴史あり、と思わずにいられない興銀ビルでのビル散歩でした。
おまけ
取材に対応していただいた日鉄興和不動産株式会社様には、ビルの歴史を物語るたくさんの資料をお見せいただきました。
レトロモダンな旧日本興業銀行大阪支店の写真が載った図書カードや、竣工当時の1階エントランスのイラスト、ビルの図面、建築中の写真等々・・・。
こういった資料を大切に保管されているところに、ビルに対する愛を感じますねぇ。ビルの見方が変わりそうです。
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※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。