御堂筋の歴史の変遷を知る「31m(100尺)制限」、生まれ変わり続ける京阪神 瓦町ビル
大阪市内にあるたくさんのビルを巡り、そのビルの特長や歴史を探る「ぶらり大阪ビル散歩」。
12回目となる今回は、大阪のメインストリート・御堂筋にある京阪神 瓦町ビルをご紹介。最近では高層ビルも増えはじめた御堂筋にあって、他のビルと揃った“控えめな”高さの佇まいから、この場で、歴史のあるビルだということは一目瞭然。期待を胸に足を踏み入れました!
京阪神 瓦町ビルとは?
昭和37年(1962)に竣工。のべ11万3千人の作業員が汗水を流し、17ヵ月という超短工期で完成させた京阪神 瓦町ビル。地下3階、地上9階の鉄骨鉄筋コンクリート造で、幾度のリニューアル工事を経て60年を超えた現在でもその堅牢な造りは健在。地下13mの強い地盤に基礎が作られており、耐震基準が厳しい現在でも新たな補強が不要なのだとか。
それでは中を探索してみましょう!
シックで美しいエントランスは
リニューアルでイメージを一新
エントランスから中に足を踏み入れると、そこは明るすぎず照度を抑えたシックな雰囲気。グレーの大理石の床が落ち着いた印象で、御堂筋の喧騒から一歩入っただけとは思えない静かな空間です。照明の土台となっている独特な形の大理石など、細部にまでこだわりが詰まっています。
壁の大理石や時計、階段の真鍮など
いたるところに竣工当時の名残が
エントランスは美しく現代風にリニューアルされたこちらのビルですが、中を案内してもらうと、あちこちに竣工当時の名残が残っています。
例えば、各フロアの壁面大理石は竣工から現在までそのまま残されており、壁にかかる独特な時計もそう。
また階段を縁取る真鍮も竣工当時のもので、定期的に磨き上げられている真鍮はLED照明を反射してキラキラ輝いています。
広々としたテナント内部は
最新のオフィスビルそのもの
現在リテナント中だというフロアの中も見せていただきました。白を基調とした明るい部屋は、ここが60年以上前に建てられたビルの中だとは思えない雰囲気。部屋の中に等間隔で並ぶ太い柱は、むしろレトロなビルの証なのだとか。
最新のハンドドライヤーも完備
トイレなどの水まわりもきれい
リニューアル時に最もこだわったところの一つが「トイレ」だというこちらのビル。案内してもらうと、確かに広々としていてきれい。蛇口と一体になった最新式のハンドドライヤーもあり、快適そのものです。リニューアルには女性社員の方々の意見を多く採用したそうで、常に美しく清掃されているなど、細部まで心づかいが行き届いています。
なんと地下にはレストランあり
社員食堂代わりに利用する人多数
エレベーターで地下に降りると、なんとそこにはレストランが。入り口に「レストラン シルヴァー」と書かれたこちらはビル竣工当初から60余年間営業しており、一般の方の利用も可。ランチタイム限定でのオープンですが、ビルで働く方々が社員食堂代わりに利用するオアシス的な存在になっています。
御堂筋を一望する眺め
屋上からの景色はこれぞ大阪!
最後にビルの屋上におじゃまさせていただきました。そこから見える景色は、まさに大阪!な、南北を見渡す御堂筋の景色。堺筋や四つ橋筋など、大阪市内には多くの大通りが存在しますが、やはり御堂筋こそが大阪の中心だと思わせる壮大な眺めは、どれだけ見ていても飽きることがありません。
壁面にある馬のレリーフは
競馬とのつながりを表すもの
ビルの北側外壁には、大きな馬のレリーフがあります。このレリーフは、京阪神ビルディングのルーツを物語るもので、著名なデザイナーの手によるものです。
御堂筋側ではなく北東側の側壁にあるため、あまり目立ちませんが、立体的な造形はとても美しく、あふれる躍動感は一見の価値ありです。
幾度ものリニューアルを経て、60年前の竣工だとは思えないほど美しく機能的なビルになっていましたが、ところどころに見える歴史に学びがたくさん詰まっていた京阪神 瓦町ビル。建てられた当初のこだわりの深さは何年経っても引き継がれ、それがこのビル独特の重厚感を醸し出しているんだな、と思わされました。
おまけ
取材の後に、御堂筋の反対側にある、同じビルオーナーの京阪神 御堂筋ビルから瓦町ビルを見せていただきました。ここから見ると、並ぶビル群がいくつかの一定の高さに揃えられている様子が見えます。建てられた年によって高さがその年代の基準に沿っているため、高さ「31m」の瓦町ビルは、ビル群の中でも特に歴史が長く、あの場所から長きにわたって御堂筋の変遷を目にしてきたのだな、と実感します。
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※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。