新旧融合の景観を守る中之島のシンボル、レンガや装飾の再利用で歴史を物語る姿を復元|一般社団法人 大阪ビルディング協会
一般社団法人大阪ビルディング協会

ぶらり大阪ビル散歩

2025/03/11

姿

様々な歴史のあるビルを訪れて、そのビルの変遷や現在の特長などを知る 「ぶらり大阪ビル散歩」。

15回目となる今回は、水辺と緑の美しい景色に高層ビルが映える、大阪のビジネス街の中でも他とは違った雰囲気の中之島にあって、このエリアの”顔”ともいえるダイビル本館です。
2013年の建て替えによって最先端のオフィス機能を持ちながら、外観は竣工当時の姿のまま。

さあ、はたしてどんなビルなのでしょうか!?

ダイビル本館とは?

「ダイビル本館」は、「ビルを造り、街を創り、時代を拓く」を理念に掲げ、大阪や東京を中心に多くのビルを所有するダイビル株式会社の第一号のビルで、大正14年(1925)竣工の旧ダイビル本館が建て替えられたもの。

京阪中之島線や地下鉄四つ橋線からのアクセスがよく、堂島川と土佐堀川2本の川にはさまれた中之島の美しい街並みに立つ、他にはない魅力的なエリアにあるビルです。

外観は”旧”ビルを思わせる
重厚でレトロモダンな雰囲気

長く中之島の顔であり、このエリアの景観を守ってきた旧ダイビル本館でしたが、老朽化と、この場所特有の地盤沈下の影響もあって建て替えることに。

建て替えにあたっては時代に即した最新の高層ビルが求められる一方、保存運動が起こるほど市民に愛されていたこのビルをレガシーとしてどのように残すか、にこだわったそう。その結果、遠くから見ると高層ビル、地上から見ると旧ビルと見紛う趣が残る、今の姿になりました。

                         それでは中に入ってみましょう!

エントランスの床タイルは
”旧”ビルから移設したもの

ダイビル本館に足を踏み入れた時、一番最初に気づいたのが扉口の低さ。今時のビルの多くは扉口が高く、解放感を感じるものですが、このビルは低く、奥まっており、ともすれば入り口を見逃して通り過ぎてしまいそうなほど。

この、旧ビルのデザインを残した扉口を通ると、エントランスの足元に広がるのは鈍く光沢するタイル。このタイルは旧ビルで敷かれていたものを再利用したもので、新しいタイルでは再現できない重厚感をかもし出しています。

オフィスの中は驚きの工夫が詰まった
ユニークで楽しい空間に

そんなダイビル本館にあるダイビル株式会社のオフィスは、「水の回廊・大阪」をコンセプトにした他では見られないユニークな空間です。

若手社員を中心としたプロジェクトチームによって2023年にオープンした新オフィスには、オフィス内をめぐる川をイメージした動線のまわりに壁面アートが施された会議室、カフェのようなコラボレーションエリア、人工芝とテントのウェルネスエリアなど、おしゃれで居心地のいい多彩なエリアがあります。

他にもビルの中は見どころたくさん
レトロビルの楽しみが今に残る

オフィスから出てビルの中を散策させていただきました。1階のエレベーターホールには、高温加熱溶着したガラスを何層にも積み重ねた緑の壁が。

幅10m、高さ7.6mの大迫力と幻想的な光に圧倒されます。エントランスホール2階は旧ビルのデザインを再現した装飾が施されており、手摺りの一部は旧ビルのものを再利用。1階の片隅には金色に輝く私設郵便函があり、「ダイビルサロン1923」はネオロマネスク様式で彩られた旧「大ビル倶楽部」の雰囲気を再現した空間。

ビル自体が見どころだらけです・・・。

これがビルの象徴
荘厳な鷲と少女の像

もう一度外に出て、玄関アーチの上部に飾られている「鷲と少女の像」を眺めます。

ダイビル本館を象徴するこの彫刻も旧ビルに飾られていたもので、明治23年(1890)大阪生まれの彫刻家・大国貞蔵の作。玄関部分の化粧梁の上にアーチをかけ、その上に設置されていることで像をより荘厳に、そしてビルのエントランス全体をより重厚に感じさせる役割を担っています。

2015年に大阪指定有形文化財として登録された、とても有名な彫刻です。

ビルを覆うレンガも再利用
15万個のレンガが現在のビルに

旧ダイビルの外装に使用されていたスクラッチレンガも、ビル建て替えに際して再利用されました。

約27万個使われていたレンガは、現在の規格から見ても遜色ない高品質なもので、一つひとつ丁寧に約18万個を取り外し、そのうち約15万個を使用。

鉄粉を入れて焼いた当時の製造方法から、長い年月によって赤黒い独特の風合いに変化しており、現在ではこういったレンガはなかなか使われないとか。

再利用できなかったレンガは、1階エントランスホールの床タイルの原料の一部として活用もされています。

中之島を、いや大阪を代表するビルであるダイビル本館の重厚感は訪れた誰もが感じるはずですが、その重厚”感”を作り出しているのは、旧ビルを踏襲したデザインだけでなく、旧ビルで使用されていた彫刻や装飾、レンガ、タイル・・・といった様々なものが実際に経た年月そのもの。

そこに立っていることで中之島エリア全体のイメージを守り続けるような、足を踏み入れるだけで時代を超えられるような、そんな素晴らしいビルでした。

アート作品はこちらで紹介したものも含め、以下のサイトにまとまっているので、ご興味ある方はどうぞ!

▶ダイビルArtGallery : https://www.daibiru.co.jp/art/

おまけ

ダイビル株式会社のオフィスを歩くと、所々の天井の石膏ボードが不自然に外され、配管が剥き出しに。そして床を見ると、これまた不自然に一部がガラスになって配線がちらりとのぞいていました。

これは、オフィスの構造を見てもらい、自社オフィス自体を一つの施工例としてショールームのように活用するためのものだとか。

確かに、オフィスの中には様々なアイデアが”これでもか!”と詰め込まれていて、これを見ればイメージが沸きやすそう。

さすがビルの会社です!

#中之島 #ダイビル本館  #ぶらり大阪ビル散歩 #レトロビル

※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。 

© Building Owners & Managers Association, Osaka

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