オフィスの上にリノベマンション。歴史ある“職住一体”の原田ビル。|一般社団法人 大阪ビルディング協会
一般社団法人大阪ビルディング協会

ぶらり大阪ビル散歩

2023/12/04

普段なら何気なく通り過ぎてしまう「ビル」にスポットを当て、その隠された歴史や秘密を紐解いていく「ぶらり大阪ビル散歩」。

第11回目となる今回は、新なにわ筋の西、西長堀駅から歩いてすぐの場所にある原田ビルが登場。北堀江通を歩いて向かうと、見えてきたビルは何やら不思議な見た目をしていて興味津々。”オフィスビル”の枠に収まらないビルの魅力をリサーチしました!

原田ビルとは?

昭和38年(1963)竣工。大正時代に創業し、長く建設資材の販売を行ってきた(株)原田商店(現・原田ビル産商株式会社)の創業者が夢を形にした原田ビル。元々、木材と鉄の町だったこのエリアには現在のように地下鉄西長堀駅がなく、アクセスは市電の電停や市バスの停留所だけになり、テナントが集まるのかどうかが不安な船出だったといいます。

一つの建物に二つの顔が!

目の前で見ると、原田ビルは一つの建物なのに上層階と下層階とで外観・雰囲気が異なる不思議な佇まい。

ですが、それ以外はレトロな雰囲気も残しつつ、美しく整備された、街の雰囲気にとけこむオフィスビルです。面した北堀江通は道幅は広いものの交通量は多くなく、静かで落ち着いた空気感にあふれています。

それでは中を探索してみましょう!

デザイン性が高く、段階的なリニューアル工事で中に入ると雰囲気が一変

中に入ると、外観のレトロな雰囲気からは一変。新しくリニューアルされた内観は最新のオフィスビルのようにすっきりとしていて、こんなビルなら忙しい毎日でも快適に仕事ができそう。

階段など、所々に竣工当時の雰囲気を残しつつ、周囲の街並みと同じ静かな雰囲気が心地いいです。

トイレなどの水まわりも美しく快適に

もちろん、気になる水まわりもリニューアル済み。トイレは清潔な雰囲気で設備も最新式。女性でも心地よく利用できそう。

トイレの奥をのぞくと、リニューアル前のビルのつくりを想像させる"謎のスペース"があるのも面白いです。(昔は喫煙所だったそう)

給湯室も使いやすくリニューアルされていて、もちろん掃除もしっかり行き届いており、快適そのものです。

竣工当時の雰囲気を残す重厚な地下空間も拝見

そしてお次は地下にもお邪魔しました!歴史あるビルの地下は、竣工当初の趣を残している貴重なエリアとしていつもテナント階との雰囲気の違いに驚かされるのですが、原田ビルも例に漏れず・・・。

コンクリートの壁や鉄の梁、配線がむき出しの地下は縁の下の雰囲気満載。ボイラー室などもあり、竣工から続く歴史をそこはかとなく感じることができます。

4階以上はというと…

なんとマンションになっています

そしてオフィス階の上はというと・・。なんと!4階以上はマンションになっています!原田ビルは、大阪府住宅協会(現・大阪府住宅供給公社)の協力により、都市の再開発の一環として「住宅併設事務所ビル」として建設されたのです。通りから見た時の不思議な形の理由はそういうことだったんですね!現在は住宅部分も原田ビル産商株式会社の所有になっているといい、そのため大きな特長があります。


ロケ地にもなったリノベマンション
おしゃれな「堀江テラス」

4階のエレベーターを降りて廊下を眺めると、そこは古き良き”昭和の団地”の風情ですが、中に入ってびっくり!現在はおしゃれにリノベーションされた「堀江テラス」として注目を集めているんです。

それはテレビドラマ「名建築で昼食を」のロケ地にもなっているほどで、女性の一人暮らし等、自分らしく街中で暮らしたい人に大人気で、入居待ちの状態なんだとか。オフィスビルと併設のため、警備員が24時間体制で常駐しているのも心強いです!

西長堀にありながら
屋上からは抜けのいい景色が

最後に、屋上からの景色を見せていただきました。気になる眺めはというと、街中にありながら、隣のビルとの距離がほどほどにあるため、意外なほど見通しがいいんです。オフィスは3階までのため”素晴らしい眺望”とはいきませんが、住宅部分からは意外なほど開放的な景色が見えます。ビルの隙間からは大阪ドームも。

“職住一体”という、これまでのビル散歩にはなかったタイプのビルの登場に、驚きを隠せなかった今回の取材。しかも、リノベーションされていて室内はおしゃれ、と、それこそドラマに出てきそうな憧れのライフスタイルを実現できるビルでした。通りから見るだけでは絶対に分からない、まさにビル散歩の醍醐味を感じられる原田ビルでした!

おまけ

取材中に資料として見せていただいたものの中に、竣工当初からの貴重なパンフレットやチラシがたくさんありました!それらのデザインはどれも、今だからこそ新しく感じられるような独特のポップさにあふれていて、見ているだけでおもしろいものばかり。資料を見ていると、まだ地下鉄千日前線が通っていなかったり、それどころか市電が通っていたり、竣工された「昭和38年」ってこんな時代!?と、大阪という街の歴史にも触れられました。

#西長堀 #原田ビル #ぶらり大阪ビル散歩 #レトロビル

※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。 

© Building Owners & Managers Association, Osaka

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