全館リニューアルを経て生まれ変わった旧・本町電話局竣工100年を目指す“電電建築” アーバンネット本町ビル|一般社団法人 大阪ビルディング協会
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ぶらり大阪ビル散歩

2022/10/14

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第五回目となる「ぶらり大阪ビル散歩」は、堺筋を大阪メトロ堺筋本町駅から
徒歩で約5分ほど南下した場所にある大阪ビルディング協会 正会員のNTT都市開発(株)様所有の

アーバンネット本町ビルにお邪魔してきました!

通りから眺める緑の窓ガラスが美しい近代的なビルには、
実は!約70年の歴史がありました。

アーバンネット本町ビルとは?

昭和28年(1953)に「本町電話局(第2船場局)」として竣工。
堺筋に面した東側が事務室、西側が電話交換機が設置された機械室でした。
昭和40年(1965)に横増築を実施し、
事務室部分は当時の中地区管理部のオフィスとして使用。


長きにわたって通信インフラを支えてきたものの、
平成5年(1993)の「大阪中央ビル(新船場ビル)」の完成によって
交換機を全て撤去し、全館事務室化。


築50年を経過した平成16年(2004)に建て替えの案が出たものの、
“電電建築”と称される高い耐震性を誇る頑丈な造りの躯体を残し、全館リニューアル。
完了後に「アーバンエース本町ビル」から現在の「アーバンネット本町ビル」に変更しました。

水害対策として高く設計された

エントランス

躯体の丈夫さだけでなく、様々な災害への対策が施されています。


堺筋から階段を上がってエントランスに入る構造になっているのは、もし水害が起こったとしても浸水しないよう設計されたもの。
地震による津波への対策が叫ばれる昨今ですが、約70年前から考えられていたんだな、と思うと驚きます。

それではエントランスから中へ早速入っていきましょう!

開放的で明るいエントランス

1階エントランスは、高い天井と大きな窓から差し込む日差しが印象的な開放的で明るい空間。
白い天井や壁とグレーの床の配色がシンプルでおしゃれ!大通りに面しているとは思えないほど落ち着いた空間です。
そして、入って右側に見える変わった形の何本もの太い柱。これがこちらのビルの躯体の頑丈さの象徴なのだと、後で分かるのです。

内装は近代的なオフィスビル

そのもの

ビルの中に入り、オフィス部分に足を踏み入れると、約70年の歴史があるとは思えない近代的な雰囲気の綺麗で清潔なオフィスビルの光景が。
こちらもシンプルな色づかいで、1フロアにいくつもの企業が入居しているもののとても静か。

廊下の途中で高さが変わる、

不思議な構造

各階を案内してもらうと、少しずつこのビルの歴史を物語る特徴が。
廊下の途中で高さが変わり、そこそこ急な坂が!
これは、天井高で6階建だった「事務室」と、天井が高くとられ、同じ高さで4階建だった「機械室」の高さの差をリニューアル時に調整して生まれたものだそう。

階段を降りてトイレへいくと・・・

フロアの坂と同様に、こちらもリニューアル時の調整の結果、階によっては坂を下ったり、階段を降りて利用するトイレがあります。
普通に利用するだけなら何とも思わないものの、意識してみると何とも不思議な構造ですよね。

機械室の大きさが分かる広い地下空間

オフィス部分の見学の後は、特別に地下を案内してもらいました。
エレベーターを降りて大きな扉を開けた向こうには、広大な空間が広がっていました。
ここは、現在は電気設備が集約された部屋や倉庫として使用されている部屋が並ぶ空間で、天井の高さは電話局だった頃の機械室と同じだそう。

見えないところに残る、

昭和28年の名残

地下フロアを歩いていると、所どころに約70年前の名残が。
レトロ感漂う大きなガラス窓と鉄の窓枠が、昭和28年から生き残ってきた歴史あるビルだと思い出させてくれます。

地下フロアの奥にある倉庫で見せてもらったこの柱が、こちらのビルの最大の特長。
昭和28年当時はとても重たかった電話交換機を設置していたため、ビル全体を支える躯体の、特に柱の頑丈さがとても重要でした。
「これがオフィスの中にもあるので邪魔といえば邪魔なんですが・・・」
とのことですが、

“絶対に”倒壊しないという安心感に代えられるものはありません。
よくよく見るとエントランスで見たあの柱と形が同じ。
他にも壁に上手く溶け込ましていたりと、いろいろな場所でこの柱を発見しました。

屋上への階段に、レトロビルの

風情を発見

最後は屋上に上がります。
屋上へ続く階段を歩きつつ、ふと足下に目をやると、階段の踏板や上がった先の床が何やらレトロビルのあの感じ。
一般の方が足を踏み入れない部分は、意外と当時のものをそのまま残しているのでしょうか。

(真偽のほどは不明)

いよいよ上った屋上は、 一般開放はもちろんオフィスで働く人たちも立ち入り禁止。

機械設備が置かれており、過去には、携帯電話回線の施設があったとか。

ビル全体を見せてもらってその歴史を学んだ後だからこそ気づく、東館と西館の間をリニューアルで埋めたあとがありました。

堺筋のオフィス街を見わたす屋上

ビルの屋上からは、堺筋沿いをはじめとした中央区のオフィス街が見わたせます。
堺筋には特別に高い建物もなく、かなり遠くまで見えるので、天気の良い日には最高の気分転換になりそう。
一般の方は入れないのが残念!

このビルを訪れ、その近代的な外観を見た時には、
まさかこんなに長い歴史と、普通のオフィスビルにはない
「頑丈さ」という機能がつまっているとは想像できませんでした。


見ていて分かりやすいビルの特長を楽しむのもいいですが、
70年の歴史と「100年を目指す」現在進行形のこんなビルのことを
しっかりと学ぶのもビル散歩の楽しさの一つなのかな、
と気づかされた一日でした。

おまけ

元々、機械棟と事務棟が別々で竣工したため、

昭和28年当時の定礎はどこにあるのかな~っと大捜索をした結果、ビルとビルの継ぎ目?にあたる場所にひっそりとありました!

(昭和二十八年六月と読めます)

近代的な外観からは想像もつかない、まさかの昭和時代の建築。

今回もびっくり&発見がいっぱいのビル散歩でした。

お読みいただきありがとうございました!

#堺筋本町 #NTT #電電建築 #ぶらり大阪ビル散歩 #レトロビル活用

※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。 

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