幻想的な吹き抜け「光庭」が 他にはない空間を生み出す
大阪市内にある歴史あるビルを巡り、その歴史と秘密を探るために、見て、聞いて、
そのビルの壮大な物語に思いを馳せる「ぶらり大阪ビル散歩」。
16回目となる今回は、JR東西線の真上、曽根崎通沿いに立つ「宇治電ビルディング」を訪れます!
見た目は最先端のオフィスビルながら、その歴史と、あまりにも贅沢な構造を内包したこちらのビル。
一歩足を踏み入れるとそこには!・・・な、驚きのビルであることを発見しました!

宇治電ビルディングとは?
ビル名に冠する「宇治電」とは、関西電力の前身である「宇治川電気株式会社」の名前が残ったもの。
その名のとおり関西電力系列のビルであるため、こちらのビルは、快適性と省エネルギー機能を持った、オール電化のハイグレードオフィスビルです。
もちろんその歴史は長く、大正14年(1925)年に最初のビルが竣工。昭和12年(1937)に当時最新・最高の技術レベルのビルとして生まれ変わり、平成26年(2014)に現在の姿に生まれ変わりました。


外観の雰囲気に
先代ビルの面影を残す
曽根崎通を歩いてビルに向かうと、遠くから見えるビルは全面ガラス張りの先進的なビルそのもの。
しかし近づいてビルの前に立つと、そこから見える景色には旧ビルのレンガの雰囲気がそのまま残っており、継承されたイメージや意匠、色調がレトロ感満載。
エントランスが奥まった構造になっており、通りの喧騒を背にビルに入る導線が、どことなく落ち着いた気分にさせてくれます。
それでは中に入ってみましょう!

エントランスはシックで明るく
ラウンジもホテルのような雰囲気
エントランスから中に一歩足を踏み入れると、そこは通りから離れた別世界。
長い階段と2階のフロアが見え、ホール全体に広がりを感じられる構造に。裏へと抜ける奥のエリアは壁一面が天井まで緑で覆われていて、他ではあまり見られない独特な雰囲気になっています。

ダウンライトで照らされた緑のカーテンは立体感があって迫力満点。目の前の椅子に座って、どれだけの時間でも見上げていたくなる美しさです。

様々な場所に先代ビルの面影が
実際に使われていたものの展示も
この、1階エントランスホールと2階が吹き抜けでつながった空間には、旧ビルから引き継がれた、品格のある意匠がたくさん残っています。
電気と水力を思わせるデザインの換気口や、稲妻、水、光をモチーフにした(と言われている)エントランスホールのアルミキャストルーバー。
そしてガラスの壁は水の流れがイメージされたもので、レンガタイルは宇治川電気の水力発電所がイメージされたもの。
内観のディテール一つひとつでビルの歴史を思わせる、秀逸なデザインですね〜。

目にしたのは贅沢な吹き抜けの空間
床面積に目をつむって守った伝統
ビルのエントランスフロアを散策した後、オフィス階に案内してもらって目にしたものがこのビル最大のサプライズ。
なんと、外からは見えないビルの真ん中に、屋上までつながる巨大な吹き抜けが!
フロアの側面からではなく、真ん中の吹き抜けから自然光が360°降り注ぐ光景は、他のビルでは見たことがない幻想的な雰囲気。この吹き抜けも旧ビルから踏襲されたもので、これを実現するために、オフィス機能としてかなりの床面積を犠牲にしたであろうことが想像できます。
う〜ん、すごい!贅沢すぎます・・・。

ビルの奥には旧ビルの壁面から
移設された女神像が
1階エントランスホールの奥に戻ると、片隅に、ビルの歴史を学べる展示がありました。
そこには旧ビルの模型や、そこで実際に使われていたエレベーターの表示板や、真鍮のドアノブと錠箱などが展示されており、こちらのビルの長い歴史が感じられます。そしてそのまま裏口から外に出ると、壁には、旧ビルの壁面から移設されたテラコッタ・レリーフの女神像があります。
この女神像は二体あったうちの一体で、もう一体は大阪歴史博物館に寄贈されているのだとか。

屋上からは
大阪・キタの景色を一望
最後に、恒例の屋上からの景色を楽しませていただきました。
こちらの場所からは大阪・キタエリアの景色が一望でき、「HEP FIVE」の観覧車や数々の高層ビル、そして遠くに山々が見えました。
そしてふと振り返ると、ビルの真ん中を貫く「光庭」をなんと!上から覗くことが・・・。
下から見上げる幻想的な雰囲気とは異なり、こちらは「高っ!」とリアルに感じられる、異なった面白さがありました。
外から見るだけでは分からない、内側から見るビルのおもしろさがつまった「宇治電ビルディング」。
外観や内観の意匠だけでなく、エントランスの上に掲げられたビル名のフォントからも伝わる歴史と伝統が素晴らしいのは言うまでもありませんが、なんと言っても光庭ですねぇ・・・。
もし一般公開されたらもう一度見に行きたくなる、そんなビルでした。
おまけ

旧ビルから移設された女神像。
旧ビルの壁面では実は、この像の上に「雲」「雷」「水」を模したレリーフが飾られており、これは宇治川電気株式会社が元々行っていた「水力発電」をイメージしたものなのだとか。
それを聞いてよくよく像を見ると、なんと両手に持っているのが「電球」と「モーター」であることを発見!
なんとなく、こういった女神像は”紀元前”だとか”神話の時代”だとか、とにかく大昔のモチーフだと思っていましたが、なんと文明の利器が隠されていたとは・・・。
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