御堂筋新橋北交差点に佇む大阪豊田ビル、62年の歴史の中で時代とともに姿を変える|一般社団法人 大阪ビルディング協会
一般社団法人大阪ビルディング協会

ぶらり大阪ビル散歩

2023/08/07

62姿

見た目は近代的なビルでも、実は長い歴史と様々な秘密を隠し持ったビルをまわる「ぶらり大阪ビル散歩」。

第9回目となる今回は、大阪のメインストリートこと御堂筋の、これまた中心にある新橋交差点から少し北に上がった場所の大阪豊田ビルです。「トヨタ」の名前が付くとおり、トヨタと関係の深いこのビルですが、歴史を辿ると現在からは想像もつかない昔の御堂筋の光景を見ることができました。

大阪豊田ビルとは?

昭和37年(1962)9月14日に竣工。名前のとおり、当初はトヨタ関係会社の大阪支店、出張所等の大部分が集まっており(全事務所階の約50%)、9階の全フロアと8階の一部には大型テナントの豊田通商が入居していました。こちらのビルには、事務所階のテナントの親睦と連絡を目的とした組織「大阪豊和会」が開館当初からあり、ビアパーティやゴルフコンペなどの催しを通して交流を行い、ここで働く誰もが過ごしやすい環境を作る一助となっています。

昔は「トヨタ」のショールームと
大きな看板がありました

現在ハイブランドの店舗が入居する1階は開館当時、「トヨタ・ショールーム」として新車の展示を行なっていました。しかし、ショールームとしては広すぎることや、地理的に効果が薄いという問題点から昭和37年(1962)年に駿河銀行大阪支店の入居とともに姿を消しました。御堂筋には現在、「テスラ」や「マクラーレン」と言った高級輸入車のショールームが並び、道ゆく人の目を引いていますが、元々はここで「トヨタ」が同じように注目を集めていたんですねぇ。屋上には幹線道路でよく見る看板もあったようで、昔の写真を見るとここが御堂筋だとは思えません・・・。

竣工60年を越えてこの場に立ち続ける大阪豊田ビル。平成7年(1995)には、阪神淡路大震災によってガラスや外壁タイルが多数破損しました。その後に緊急復旧工事を行いましたが、平成9年(1997)に耐震診断を行い、平成11年(1999)から約2年間をかけて耐震工事を行いました。

「テナントが営業したままで耐震補強」、「改修後も今と変わらぬテナント空間を」という課題に取り組み、隣地境界と建物の間に余裕があったこともあって、耐震補強を行うとともに外観イメージを一新しました。

緑の並木とテナントのハイブランドが
”これぞ御堂筋”な景観をつくる

大阪豊田ビルの現在の外観は、60年以上の歴史を感じさせるレトロ感を醸し出しながら、とてもモダンな雰囲気です。改修工事を経て生まれ変わった光沢のある石張り・アーチ型の1階路面のデザインは、テナントとして入居するハイブランドのイメージともよくマッチ。目の前の白い歩道と緑の並木の美しさと合わせて”これぞ御堂筋”と言った雰囲気を作っています。歩いているだけで気分が良くなる、そんな通りになっていますよね。

それでは中を探索してみましょう!

白を基調としたフロアは美しく
管理が行き届いた心地いい空間に

白を基調に、石張りのフロアや壁を暖色のライトが照らすエントランスは、大きな観葉植物が一つあるだけのシンプルで落ち着いた雰囲気の空間。傍には、後ほどお伺いする地下の飲食店街へ続く階段があります。

エレベーターを上がって事務所階に足を踏み入れると、こちらは白い壁にグレーのマットが敷き詰められたフロアの、”ザ・オフィス”といった雰囲気。様々なジャンルのオフィスが入居されていますが、とてもクールな印象です。

駐車場や広い会議室もあり
多目的に使われています

事務所だけでなく、大阪豊田ビルには他にもいろいろな施設があります。地下には広い会議室があり、様々なイベントが行われています(先ほどのビアパーティーもここで行われているとか)。

そして、地上から坂を下って直接乗り入れできる駐車場もあり、働く人々の利便性がしっかりと考えられていますねぇ。

御堂筋沿いだと忘れてしまいそうな
緑あふれる屋上庭園

そしてこちらのビルの大きなポイントが、大阪のど真ん中のビルだとは思えない、緑あふれる屋上庭園!見渡す空と通り抜ける風の心地よさはもちろんのこと、広々とした芝生の広場や緑のアーチ、そしてウッド調のテーブルは、他のビルの屋上ではなかなか見れないような公園っぽさ。仕事の合間の休憩に、お昼休みのひと時に、こんな空間で休むことができるなんてとても素晴らしいですね!

近隣で働く人々の憩いの場
地下には飲食店フロアも

エントランスの階段を下りるとつながっているのが、地下のレストランフロア「トヨチカ名店街」。懐石・しゃぶしゃぶやカレー、洋食、喫茶店等、このエリアで働く人にはおなじみの、知る人ぞ知る名店がずらり。もちろん、誰もが利用できるので、お近くを通った際にはぜひ。他にも歯科、ゴルフ店、旅行代理店がテナントとして入居しています。


トヨタとつながりの深い歴史だけでなく、屋上の美しさや地下のレストラン街など、様々な特長があった大阪豊田ビル。竣工から現在までの歴史を辿る過程では、ビルの歴史をまとめた書籍や写真など残っている資料も多く、「御堂筋に「トヨタ」の看板が!」や「御堂筋って昔は相互通行だったんだ!」など、いろいろな発見があり、とても楽しい取材でした!

おまけ

1階の奥にあった古めかしい郵便ポストを眺めていると、ビルの所在地に「南区」という文字が。

ここは以前は「大阪市南区塩町通四丁目」という住所で、郵便番号も「542」と、なんと3桁!取集局には「大阪南」と書いてあり、「ここが大阪の”南”?南というよりは真ん中な気がするけど・・・」と、昔の大阪の街全体の様子が少し垣間見られるような発見がありました。

ビルに歴史あり、大阪の街にも歴史あり、と同時に学べた一日でした。

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※掲載写真は、本記事用に許可をとり撮影をしたものです。写真撮影の可否については、事前にご確認いただきますようお願いいたします。 

© Building Owners & Managers Association, Osaka

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